プライマリ・ケアにおける未分化な問題の定義や特徴、分化が難しい5つの理由

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Editor, 家庭医

McWhinney's Textbook of Family Medicine | Oxford Academic 9:Clinical Method

★論文の内容:

未分化な問題の定義:今まで医師によって評価され、カテゴリーに分けられ、そして命名されていなかった問題。

今まで医師は患者が示す生データを解釈し、自分自身が調べたことを付け加え、その病気を医師の基準となる枠組み内の疾患カテゴリーに照合させようとしてきた。しかし、それができないものが5つある。

  1. 一過性で自然治癒し、診断の証拠を残さないもの。診断されることなく何ヶ月も過ごしてからすっかり良くなることもある。
  2. 非常に早期に治療されて、明確な診断をする以前に終息するもの。
  3. すべての疾患カテゴリーの辺縁のもの。軽い異型や境界型になるもの。
  4. 病気の本質が姿を表すまでに長期間に渡って未分化でいるもの。
  5. 患者の人格や私生活に織り交ざっていて分類できないもの。(慢性疼痛など)

 

長期間未分化な病気があるという事実は、家庭医療における医療の方法に多くの影響を与える。臨床の問題解決方法の教育が行われるセッティングは高度医療機関であり、決まったデータを集め病歴聴取と身体診察を行い、そしてデータから推論することによって診断するというやり方である。

この高度医療機関におけるケアの枠組みを基準とすると家庭医のセッティングでは途端に困難に見舞われることになる。このとき、疾患の診断というよりはむしろ患者を人として診断することが重要であり、それ故に患者中心の医療の方法がある。待機することによる危険を考慮した上で時間という武器を使い、患者-医師の人間関係から問題を読み解き意思決定につなげることが家庭医の一つの特徴になる。

この家庭医療学における時間尺度の違いは、家庭医療学の初心者にとって理解するのが最も難しいものの一つである。専門医と違い未分化な問題に対しては最終的な診断をつけなければいけないという制約はないので、診断ではなく治療の決定という点を意識して、待つのか・紹介するのか決定する役割が家庭医にはある。

★ディスカッション:

疾患があり、罹患するという極めて個人的身体経験をして、その一つの表現として症状がある。症状の提示のされ方が何を意味するのか把握することが家庭医には必要である。

カテゴリー化は、個人差を無視することで成立する一般化の過程であり、疾患の早期に出会い未分化の状態でカテゴリー化することは難しい。

時間という資源を上手く用いて未分化な問題に取り組み、患者-医師の人間関係醸成していくことで意思決定を進めることができると学んだ。

参考文献、引用

  1. McWhinney’s Textbook of Family Medicine | Oxford Academic    9:Clinical Method 

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