入院患者の終末期ケア
病院が依然として終末期医療の場であり続ける一方で、緩和ケアを専門とする医師不足の現状は続いていくと思われる。そういった中で、終末期ケアは非専門医によって適切に行われる必要がある。本論文では、末期患者や家族の価値観/目標などを確認するために有用なコミュニケーションスキルや、終末期の諸症状への対処をまとめたreviewである。
★ディスカッション:
本reviewは終末期ケアに関する総説である。
終末期ケアにおいてコミュニケーションが重要な根拠として、末期の目標設定に関する話し合いは、患者の希望とその時期に受けるケアとの一致を高め、積極的な延命治療の使用を少なくし、患者の希望に沿った終末期ケア、集中治療室での死亡の減少、ホスピスへの早期紹介と相関しているとの報告が複数件引用されている。ガイドラインとしての簡潔な記載に留まっていたが、患者の理解を確認し、どのような情報を希望しているのか、どのように決定を行うのか、等を話し合うというプロセスは、所謂「かきかえ」によるコミュニケーションに通ずるところがあると感じた。
また、本論文では各論的に、疼痛/呼吸苦/咳嗽/口腔乾燥/口腔・咽頭分泌物/嘔気・嘔吐/便秘/食思不振・悪液質・脱水/発熱/不安・不眠/せん妄/緩和的鎮静といった終末期に遭遇しやすい症状への対応が記載されていた。
このうち、個人的に注目すべきと感じたところを幾つか引用する。
・疼痛:神経障害性疼痛はオピオイドで十分な鎮痛効果を得られないことがあり、体性/内臓性疼痛と区別する。急性の神経障害性疼痛にはステロイド、生存期間が比較的長いと思われる場合は、リドカイン/抗うつ薬/抗けいれん薬などを使用する (効果発現に時間がかかるため)。
・呼吸苦:低酸素血症のないがん/心不全患者には、酸素投与は有益ではない。
・脱水:終末期患者の脱水に対する症状/QOL/生存期間改善のための補液/栄養は支持しない。
・発熱:特定の疾患を治療するわけではない、終末期の発熱に対する抗菌薬投与は、有効性が示されていない。
・不眠:短時間作用型ベンゾジアゼピンは、不安が主因の末期患者の不眠を改善する。
その他にも広範囲にわたる記載があった。総合診療医は在宅や慢性期病棟などのさまざまな場面で終末期ケアに関わる機会が多く、このreviewも一助となるであろう。
参考文献、引用
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