複雑性に関する知識がなぜ必要か?
Founder, 家庭医
★ディスカッション:
クネビン(Cynefin)フレームワークとして知られる「単純(simple)」、「込み入った(complicated)」、「複雑(complex)」、「混沌(chaos)」の分類は新・家庭医療専門医のポートフォリオにおける「複雑困難事例のケア」でよく持ち出される枠組みである。
予測可能でも一般化可能でもない人間関係や社会的な問題を抱えた人々に対する、統合されたコミュニティーベースのケア(本論文のBox 1では、Glouberman と Zimmermanらの論文を参照し「狭心症、糖尿病、うつ病、アルコール、法律、家族の問題を抱えている恵まれない集団のための複雑な慢性疾患ケアのベストプラクティス」が例として挙げられている)を提供するために、総合診療医・家庭医にとって複雑性に関する思考のフレームワークや知識を持つことが重要ということになるだろう。
そしてプライマリ・ヘルスケアの1部門としてのプライマリ・ケアが上記のような能力を持って活動していくことで、要素分解主義的な従来の科学で理解できるプライマリ・ヘルスケアからさらに進化を遂げ理解を深めるというゴールがある。
新・家庭医療専門医のルーブリックとして「複雑困難事例のケア」と「統合されたケア」が併記され、どちらかを選ぶ形になっているのは、結局統合されたケアを地域社会で提供するために、総合診療医・家庭医が複雑性に関する知識や思考の能力を必要とするため、この2者が表裏一体不可分なものであることが理由なのかもしれない。
参考文献、引用
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