Longitudinality の概念
医療に関わる論文の中には“comprehensiveness,” “quality,” “‘continuity”などの用語を含むタイトルがあり、それらの言葉が何のどの部分を意味するのかは定まっていない。この「継続性」とも表現できる分野の意味を区別するためには”longitudinality “と “continuity “という言葉を対比してみることが有用であると、この論文で述べられている。
“longitudinality “とは「患者がその医療機関や医療者を選ぶ」「患者が選んだらいつでも受けいれる」ような長期的な人間関係を指し、 “continuity “とは一つのプロブレムのマネジメントを継続的に行っていくことと言えるだろう。
言葉の意味を明確に定義することは、今後の研究データの蓄積や分析には非常に有用であり、患者の疾患予防、管理、健康増進などに寄与する研究を進めていく上で力を入れていかなければいけない部分である。
★ディスカッション:
“longitudinality” と ”continuity” を比べてみる。AlpertとCharney(参考文献2)は、特定の問題や診断の有無にかかわらず存在する継続的な関係に対して、「longitudinal responsibility」という言葉を用いており、患者がケアを必要としたときにいつでもケアを受けることができる場があることと、患者がケアを受けると決断できることの両方を指していた。
特定のプロブレムにこだわらずに、いつでも頼れる場としてのmedical homeがあって、しかもその場(医療機関)の医師など医療スタッフと患者とが、お互いに人となりを知っている、という関係性があることがlongitudinalityである、とも言いかえられるだろう。continuityは、患者が抱えたプロブレムのフォローアップを促進し、診断的ワークアップとマネジメントの効率化を行うことであるという認識があり、それは長期にわたる患者のトータルケアというよりは、患者の特定の問題に対して長期的なマネジメントを施すことと一致する。
つまり、家庭医の中での「継続性」という言葉は、単一のプロブレムについて長い時間診ていくという意味でのcontinuityだけではない。それに加えて、一つのプロブレムのマネジメントが終了したとしても、新たなプロブレムの出現時にはまた頼ってもらうというlongitudinality / longitudinal responsibility の側面が大切なのではないかと考える。
慢性疾患に対する効果的なケア、急性疾患に対する患者中心の医療の提供はもちろんのことだが、予防、健康増進、人生会議など、疾患概念にとらわれない医療の提供についても、このlongitudinalityという関わり方が大切になってくるのではないかと思った。
この2つは区別するべきものだが、相容れないものではない。「長く診ること」はプライマリ・ケア医になれば当たり前という一般論はあるが、longitudinality / longitudinal responsibilityを意識して長く診ることの重要性と価値が真に理解され、浸透していくことが望まれる。
参考文献、引用
Starfield B. Continuous confusion? Am J Public Health. 1980;70(2):117-119.
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