ケアの継続性は真に患者のためになるか?

Continuity of Outpatient Care and Avoidable Hospitalization A Systematic Review

★論文の内容:

‣COC (Continuity of Care):ケアの継続性


‣ACSC (Ambulatory Care-Sensitive Conditions):
 プライマリ・ケアの適切な介入により入院リスクを低減できると考えられる疾患群
 喘息 / 細菌性肺炎 / 心不全 / COPD / 脱水 / 糖尿病 / 高血圧症 / UTI / 虫垂穿孔 など

COCはプライマリ・ケアの中核的要素である。本研究では15件の研究を含んだメタアナリシスを行い、COCとACSCsとの相関を調査した。結果、外来におけるCOCの増加は、ACSCsによる入院の減少と強く相関することが示された。

また、COCとACSCsの相関は、紹介制 (アメリカ/イギリス)、フリーアクセス制 (台湾/韓国/ドイツ) の医療制度のいずれでも認められた。

なお、COCの客観的尺度は数多くあるが、Bice-Boxerman Contiuniity of Care Index (COCI) と Usual Provider Continuity (UPC) index が一般的に使用されていた。

★ディスカッション:

プライマリ・ケアの定義としてよく紹介されるACCCAにはContinuityが含まれる。

診療における継続性がケアの質を高めることは直観的には理解できるが、本論文では実際に入院予防のアウトカムをもたらすかreviewされている。


本論文を読み、ACSCsという概念を恥ずかしながら初めて知った。ACSCsは以下の3つに大別される(Public Health 2009; 123: 169-173.)。
・慢性疾患:管理により再燃を予防する。
・急性疾患:早期の介入により進行を予防する。
・ワクチンで予防可能な疾患:予防接種などの介入で特定の疾患発生を予防する。
この分類を見ていると、プライマリ・ケア医が日常的に出会う疾患の大半がACSCsだと感じる。ケアの継続性を高めることで、日常臨床で出会う患者の入院を予防することができるのであれば、プライマリ・ケア医冥利に尽きるのではないだろうか。

一つ気になった点として、レビューに含まれたRomaireらのアメリカでの報告 (Med Care. 2014; 52(12): 1042-1049.) では、専門医によるCOCはACSCs入院の減少と相関したが、Primary Care PhysicianによるCOCでは相関しなかった。この点は家庭医によるプライマリ・ケア提供の意義を論ずる上で、より詳細に評価される必要があると考える。

また、COCがどのように定量化されているかという点も大変興味深い。COCの評価尺度としてCOCIとUPCIが多く用いられていた。COCIは患者が受診した医師数とそれぞれの医師への受診回数から0-1間の値で算出され、1に近いほど継続性が高い(1であれば同一医師への受診のみ)とされる。UPCIは一定期間内の受診のうち、特定医師への受診の割合として算出される。

様々な形でケアの継続性の定量化が試みられている一方で、継続性は必ずしも受診回数のみで表現されるものではないという印象もあり、継続性の定量的評価の困難さも感じられた。

参考文献、引用

  1. Yu-Hsiang Kao, et al. Continuity of Outpatient Care and Avoidable Hospitalization: A Systematic Review. The American Journal of Managed Care. 2019;25(4).

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